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2004年08月 アーカイブ

2004年08月01日

アメリカ民主党大会にbloggerが参加

例によって、National Public Radioの番組、On the mediaから
先週(2004年7月25日からの週)は、アメリカのありとあらゆるメディアが民主党大会での大統領候補正式指名に向けたお祭り騒ぎで沸き立っていたわけだけれど。
この大会は、他のあまたのメディアの取材陣とともに、bloggerからの取材申し込みがはじめて認められた、ということで、画期的な大会となった。といっても、取材が認められたbloggerは、200人の申し込みの内30人程度であり、大会全体の規模が数千人の参加者に対して、取材陣が一万人以上だということも忘れてはならない。
さらに付け加えると、民主党の広報関係者は、bloggerを他のメディア人と同列に捉えているわけではない、ということ。ほとんどのbloggerは個人の資格で参加しており、そのことは、blogの本質でもあるのだが、彼らから発信される情報や意見は、編集者の選択眼やや他のジャーナリズムには必ずつきまとう報道倫理の規制をうけていない。このことに対し、the Kennedy School of GovenmentのAlex Jonesは、bloggerたちが、大会に対してよけいな雑音を付け加えるだけではないか、というおそれを表明している。

この報道からも分かるように、アメリカではすでにblogはジャーナリズム論の一環として議論されるまでのメディアに成長もしくは成熟してきている、ということ。

では、日本のblogは。ぼく自身のことも含めて、日本の良き伝統?である私小説の文脈に収まっていくのか、既存のメディアを越えた批評メディアとして育っていくのか。ま、それを決めるのは、個々の書き手と、それに反応する(もしくは反応しない)読み手たちだけれど。

2004年08月17日

『部首のはなし』(阿辻哲次著)

中国文化史の阿辻哲次さん(京都大学)が、標記の御本(中公新書)を送ってくださった。
ぱらぱらとめくって二三の項目を読んでみると、すこぶる面白い。ここのところ、紙の本とはとんとご無沙汰で、もっぱらインターネットからダウンロードしたラジオ番組の耳学問しかやっていなかったのだけれど、最初のページから少しずつ読み始めた。なるほど、随筆とはこういうものだったな、と改めて思った。阿辻さんご自身の学識と、ご家族や友人知人たちにかこまれた日々の生活と、コモンセンスと言ってもよい世上に対する健全な批判精神が相俟って、読んでいて何とも楽しいのだ。
ちょっと人に話したくなるような知識や小話にも不足はない。悲しいかな、ぼくには、妻や娘ぐらいにしか話す機会はないのだけれど、さぞや、阿辻さん、祇園や銀座でもてるだろうなあ、とうらやましくなった。

なによりも、不思議というか、うれしいことは、阿辻さんの手にかかると、一見無味乾燥な漢字が、生き生きとした命を持ったものに感じられるようになること。例えば、「肉」の項目で紹介されている、「然」という字。「《火》と《犬》と《月》(=肉)からなる会意文字で、本来は犠牲として供えられた肉を焼くことを意味する字だった」(p60)のですって。まさに、旧約聖書のアブラハムが犠牲の羊を捧げる場面を彷彿とさせる。おっと、旧約聖書の世界に漢字があれば、《犬》のかわりに《羊》を配した漢字が作られていたかも。

で、ちょっと思い出したことがある。夏目漱石の『門』の一節。

すると宗助は肱で挟んだ頭を少し擡(もた)げて、
「どうも字と云うものは不思議だよ」と始めて細君の顔を見た。
「なぜ」
「なぜって、いくら容易(やさし)い字でも、こりゃ変だと思って疑ぐり出すと分らなくなる。この間も今日(こんにち)の今(こん)の字で大変迷った。紙の上へちゃんと書いて見て、じっと眺めていると、何だか違ったような気がする。しまいには見れば見るほど今(こん)らしくなくなって来る。――御前(おまい)そんな事を経験した事はないかい」
「まさか」
「おれだけかな」と宗助は頭へ手を当てた。
「あなたどうかしていらっしゃるのよ」
「やっぱり神経衰弱のせいかも知れない」
「そうよ」と細君は夫の顔を見た。夫はようやく立ち上った。

この症状は、精神医学の世界では、わりと有名なものらしいのだけれど、近代の病を先駆的に経験した漱石の一面がよく表れていて、すごく印象に残っている。

こう考えてくると、阿辻さんのコモンセンスは、文字を世界と隔絶した無味乾燥な記号として扱う態度とは対極の、文字が人々の世界観としっかり結びついていた幸せな時代を研究しておられることと無関係ではない、という気になってくる。

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