« 2007年02月 | メイン | 2007年04月 »

2007年03月 アーカイブ

2007年03月06日

本の解体新書:実践編

さてと。

昨年暮れにわざわざインターネットでオランダのiRex社からiLiadを買ったわけですが、クリスマス直前に届いたのはよかったものの、12月26日にはディスプレー上部に一本の細い線が常駐するようになって。サポートフォーラムで調べてみると、この故障、結構多発しているみたいで。結局、年明け早々に一旦メーカー(サポートセンターはドイツ)に送り返して修理をしてもらうことになりました。

一月足らずで戻ってきたのはちょっとありがたかったわけで、昨今はこのiRiadを常用して読書三昧の生活なわけです。

ここいらで、iLiadを中心としたぼくの読書環境整備状況を報告しておきたく。

iLiadについて簡単に説明しておくと。フィリップスからスピンオフした会社iRex Technologiesが製造販売している。電子書籍リーダー。コアテクノロジーは、元々MITで開発され、現在はeINK社が開発を続けている電子ペーパーの技術。ディスプラーの製造は、日本の凸版印刷が行っている。それに、ワコムのデジタイザー技術が組み込まれている。

基本的なコンセプトは、Sonyが北米で発売しているSony Readerとほぼ同じだが、決定的な差は、そのディスプレーの大きさ。Sony Readerが6インチなのに対して、iLiadは8インチ。この差が、価格差にもぼくの物欲にも大きな影響を持っている。


このページは xfy Blog Editor を利用して作成されました。

2007年03月08日

小倉朗とバルトーク

  • タイトル:第639回定期演奏会 Bシリーズ
  • 開始日時:2007-02-24 19:00
  • 終了日時:2007-02-24 21:00
  • 場所:サントリーホール
  •  指揮:高関健

    ピアノ:田部京子

    ピアノ:小川典子

    打楽器:安藤芳広

    打楽器:小林巨明

    児童合唱:TOKYO FM少年合唱団/世田谷ジュニア合唱団

    《別宮貞雄プロデュース 日本管弦楽の名曲とその源流4》

        * 間宮芳生:合唱のためのコンポジションNo.4 「子供の領分」

        * 小倉朗:管弦楽のための舞踊組曲

        * バルトーク:2台のピアノと打楽器と管弦楽のための協奏曲

        * バルトーク:舞踊組曲

小倉朗は、ぼくにとってとても大切な人だ。学生時代に知遇を得、亡くなるまでのほぼ20年、音楽のみならず全人格的な生きざまの師として接した。彼の最後の著書『なぜモーツァルトを書かないか』を企画編集する機会にも恵まれた。その彼の曲が演奏されると苑子夫人からうかがって出かけた。

演奏全般について正直に告白すると、ああ、小倉朗も古典となったのだ、という感慨。決して悪い演奏ではない。いや、破綻もなくうまい演奏といっていいのだろう。しかし、その破綻のなさ、見通しの良さが、どこか素直な感動に入っていけない欲求不満を残す。今から振り返ってみると、バルトークも小倉朗も前世紀の作曲家で、それぞれの曲は同じ時期に書かれたと言ってもいいほど、時間が経っているのだ。過去の偉大な作曲家の作品に連なる古典曲として冷静緻密に演奏されるのが当たり前と言えば当たり前なのか。

中では、バルトークの2台のピアノと打楽器と管弦楽のための協奏曲が、高い緊張感と密度を保持し続けていて、非常によかった。まあ、この曲の原曲は、打楽器奏者にとっては室内楽の古典中の古典ということになるのだが、協奏曲版はめったに演奏されることがないのではないだろうか。ぼくも、バルトーク自身が夫人とともに演奏したライブのレコードをずうっと以前に聞いた記憶があるだけ。ソナタ版に比しても、他のバルトークの協奏曲に比しても、うまいオーケストレーションとは言い難い。しかし、当夜の演奏は、そのことが逆に幸いして、ソリストたちの主体的な会話を指揮者とオーケストラがそっと支えるといった塩梅になっていた。

この曲を聴きながら、ぼくは、ずうっと以前に交わした小倉朗との短い会話を反芻していた。

学生時代、まだ小倉さんが藤沢市の大庭に住んでいたころ。大学の小倉ゼミ(ぼくが企画して、大学の正規の全学一般ゼミナールとして認められていた)の仲間が集まってホームパーティのようなことをやっていた。ぼくは、バルトークの2台ピアノと打楽器のソナタのミニチュアスコアを持っていって、ある個所のリズム構成について質問しようとした。

小倉さんは一言

「きみもペダンチックだねえ」

とだけ答えた。

この答えが、ぼくにはとてつもなく応えた。そして、人生の指針となった。

音楽にたどり着く道はアナリーゼだけではない。もっと大切なものが他にある。頭の中で音符を切り刻む前にもっとやるべきこと考えることがある。ことは音楽だけではない。書物にしても事象にしても、自分を埒外において批判的に見るのではなく、全人格をもって立ち向かえ。

四半世紀経って、ぼく自身の言葉で小倉朗の言葉を敷衍すると、おおむね上記のようなことになる。小倉朗は、ぼくの質問から、そのころの青臭いぼくの性向を見透かし、たった一言で生き方全体に対して大きな方向付けをしてくれたのだった。

このページは xfy Blog Editor を利用して作成されました。

2007年03月28日

小澤征爾のタンホイザー

  • タイトル:ワーグナー:歌劇「タンホイザー」
  • 開始日時:2007-03-24 15:00
  • 終了日時:2007-03-28 20:00
  • 場所:横須賀芸術劇場
  • 音楽監督/指 揮  小澤征爾

    演 出  ロバート・カーセン

    出 演  タンホイザー ステファン・グールド

    エリーザベト ムラーダ・フドレイ

    ヴェーヌス ミシェル・デ・ヤング

    ヴェルフラム ルーカス・ミーチェム

    領主ヘルマン アンドレア・シルベストレッリ

    ヴァルター ジェイ・ハンター・モリス

    ビーテロルフ マーク・シュネイブル

    ハインリッヒ 平尾憲嗣

    ラインマール 山下浩司

    ほか

    管弦楽  東京のオペラの森管弦楽団

    合 唱  東京のオペラの森合唱団

    装 置  ポール・スタインバーグ

    衣 装  コンスタンス・ホフマン

    照 明  ロバート・カーセン/ペーター・ヴァン・プラット

    振 付  フィリップ・ジュラウドゥ

さてと。小澤征爾の指揮を生で聴いたのはいったい何年ぶりだろう。そして、オペラは?

もう四半世紀ほども前に、ヴォツェックを聴いたのを覚えている。演奏会形式+アルファのやり方。ステージにオーケストラが乗っており、その上に足場を組んだりして、歌手はある程度の移動と演技を行う形式。たしか、あのときも暗譜だった。今回も。

演出は、第一幕こそ、ヴェーヌスがヌードで登場したと思ったら、バッカナールでは多くの男性がこれまたセミヌードで登場して、ボディーペインティングもどきをやらかしたりして、ぎょっとさせられたものの、第二幕以降はオーソドックスな現代風演出(語義矛盾だねえ)で安心。大団円など、いささか拍子抜けするような浄化場面で、演出のロバート・カーセンが世界的に人気を博するのも納得。

歌手も粒がそろっていて破綻がなかった。ヴェーヌス役のミシェル・デ・ヤングが第一幕で足を怪我し、第三幕では代役が演技を、本人が袖で歌唱を、といったアクシデントがあったが、それもご愛敬というか、事故があってのオペラの楽しみみたいなもので、本人にはかわいそうだったが、舞台と客席の間を埋めるポジティヴな働きをしていた。(客席の一部を利用した演出も好感が持てた)

しかし、何と言っても、このオペラはオザワのオペラなのだ。パリ版を用いて、序奏から延々と続くバッカナールに入って、まずはたっぷりオーケストラを楽しんだところで、やっと歌が聴けるというところもそうだし、第二幕の有名な歌手たちの入場場面もそうだし、なにしろ、オーケストラがめっぽううまい。4階席の一番前で聴いたこともあって、オーケストラの音の分解能がとっても高くって、個々のメンバーの名人芸がよく聞こえるの。オザワがオケ鳴らしのとびきりの名手だということも、あらためて思い知らされた。でも、これってオペラなのだろうか? いや、そんな疑問を持ってもいけないのだろう。オザワが完全に掌握したオーケストラと歌手陣と合唱が、一丸となって押し出す音の洪水に、抵抗することなく身を委ねて包み込まれる。そんな楽しみ方をすればいいのだ。

この劇場は、音響もいいし、ヨーロッパの歌劇場のように二階席以上がバルコニー作りになっていることも好感が持てる。しかし、ロビーのトイレと喫茶コーナーの動線の悪さや駐車場に降りるエレベーターが一基しかないことなど、客席の扉の外の作りは、いささか興を削がれる。音楽を聴くというのは、前後の食事やホールに向かう道すがらの会話なども含めた時間の流れがあってのことだと思うのだけれど。

そういえば、歌舞伎座だって、舞台がはねた後の余韻が、地下鉄に降りる階段のところで、ブッチリと断ち切られてしまうのは、もうすこし、何とかならないかなあ。暖かくて時間に余裕があれば、新橋までぶらぶら歩いて帰る、っていう手もあるけれどね。

小澤征爾は、夏にカルメンも振る。琵琶湖ホールに出向いて、オーベルジュに泊まって、なんてことも考えていたけれど、同じ日に弥勒忠史さんプロデュースのオペラ宅配便があるので、今年はパスに決定。神奈川県民ホールで聴こうかどうか迷い中。
このページは xfy Blog Editor を利用して作成されました。

About 2007年03月

2007年03月にブログ「小林龍生の怠惰な日々」に投稿されたすべてのエントリーです。過去のものから新しいものへ順番に並んでいます。

前のアーカイブは2007年02月です。

次のアーカイブは2007年04月です。

他にも多くのエントリーがあります。メインページアーカイブページも見てください。